映画・テレビ

2015年4月13日 (月)

”古賀の乱”と報道ステーション

 今日の毎日新聞夕刊の特集ワイド「『報道ステーション降板は官邸バッシング』発言」と、10日発売の文藝春秋5月号・深層レポート「『報ステ』の最後」(ジャーナリスト・上杉 隆)を続けて読み、或る感慨がこみ上げてくる。「今日のテレビ番組予約欄」の筆頭に、いつもランクするほど「報道ステーション」が大好きだったからである。しかし、これまで「勇気ある発言をするな」思っていた古館キャスターが、2つの記事のごとく、”古賀の乱”の裏でいろいろ自己保身のために画策していたとなれば、幻滅を感じるのは当然だろう。知らずに済めばよかったものを、わざわざ”舞台裏”を見せつけられた者の不幸と言わざるを得ない・・・

 過去、時の政権がマスメディアへ目くじら立てることはあまりなかった。「よくこんなことを言われて黙っているな」と政権への同情心すら湧いたぐらいだ。その点、安倍首相はかなり神経質らしい。今度の古賀氏の問題発言場面も、視聴者にすれば何が何だか分からない一瞬の出来事だった。騒ぎが大きくなってから真相がだんだんわかってきたが、その中で最も驚いたのは古館氏の出演料だ。12億5千万円という。いくらテレビ・メディアの時代とは言え、「栄華」そのものではないか。バックに早河・テレ朝会長がいる限り、このギャラは続き、降板もないだろうとのこと。さて、今夜の「古館・報ステ」、どんな番組になるか?・・・真の「ジャーナリズム」の復活こそ待たれる!・・・

  今日の一句は、「永き日や つばたれ下がる 古帽子」永井荷風。

2015年3月26日 (木)

関西テレビ・報道番組「アンカー」水曜日担当・青山繁晴氏が外れる

 25日の関西テレビ・「アンカー」の番組で、水曜日担当・青山コメンテーターがお別れの挨拶をした。先々週、聞いていたので別に驚きはしなかったが、「どうして?」との感は拭えない。安倍首相の私的ブレーンでもあり、視聴率も決して悪くなかったので関西テレビ側が青山氏に降板を強いることはないはず。他方、政治や経済の考え方については、賛否半々是々非々というところだが、いろんな情報について青山氏独特の「深読み」には非常に興味があった。また、断定的な情報分析と歯ぎれのいい語り口は、視聴者を惹きつける何かがあったのは事実。とにかく、9年間続いた「青山節」が、この番組ではもう聴けななくなったのは些か寂しい・・・

 昨日の最後のテーマは、連休に7泊8日の日程で訪米する安倍首相の米・両院議員合同会議における演説についてであった。これはたいへんなニュースなのに、日本のマスコミは大きく取り上げていない、これはおかしいと不満そう。これまでこの合同会議で演説した日本の首相はたった3人。吉田、岸、池田首相であり、安倍首相は4人目となる。ところが、演説の中身を巡って、今、米・民主党が無茶な要求を日本政府にしているという。つまり、演説の中で「侵略」「」南京大虐殺」「慰安婦問題」に言及せよということ。どうせ韓国がロビー活動でカネを積んでのことだろうが、安倍首相にとっては、「隠れた新しい最大の苦悩なのだ」と青山氏。演説は5月、戦後70年談話は8月15日、どんな演説をするのだろうか?・・・前回は冷やかだった米国、今回は歓待するそうだが、果たして?・・・

  今日の一句は、「利休忌の 読経椿の  中よりす」奥山正子。

 

2015年3月18日 (水)

関西テレビの報道番組「アンカー」消える!

 4月にテレビ番組の入れ替えが行われるのは例年のことだが、今回驚いたのは、関西テレビの報道番組「ニュースアンカー」が消えてなくなるという話だ。今日の同番組担当コメンテーター・青山 繁晴氏が「月曜日に正式に発表あり、9年間続いたこの番組が今月一杯できれいになくなる。私の担当は今日と来週の水曜日だけとなり、視聴者の皆さんに感謝したい」と、いとも神妙なる感謝の弁を述べる。まぁ「深読みの青山」情報には、毀誉褒貶いろいろあったが、ズバリ本質を突く分析には、時として感銘的ですらあった。特に、携帯電話で直接話ができる「安倍シンパ」だけあって、ドキリとさせられた”水面下情報”は一度や二度ではない。その点、惜しい気がしてならない・・・

  コメンテーターとして印象深いのが森田 実氏もその一人。リベラルという点では、共感性があり、昨年3月、突然アンカーを降板した時は驚いた。「郵政解散で自民党の圧勝を電通の力が大きい」との発言が遠因になったとのことだが、歯に衣を着せぬ辛辣な発言は小気味よかった。降板後、自らのプログで関西テレビの同番組スタッフに丁重な謝辞を送っていたことは、今も強く印象に残っている。もう一人、鈴木 哲夫氏のコメント「永田町取材ノート」も面白かった。常に公平な立場で語ろうとする姿勢に好感が持てた。いずれにしても、「アンカー」は消えてほしくない番組であったことは確か・・・次はどんな報道番組が登場するのだろうか?・・・

  今日の一句は、「春の雁 淋しきときを 渡りけり」小林康治。

2015年3月 7日 (土)

テレビ朝日の「報道ステーション」、古賀コメンテーター降板

  昨6日のテレビ朝日系の報道番組「報道ステーション」にコメンテーターとして出演した古賀茂明氏(元官僚)、聞いていて何か調子がおかしいのだ。シビリアンコントロールの閣議決定が近々なされる話の中で、古賀氏は言う「先日、中東・某国の大使が私に『日本はいい国だったのにね』と言った」と。イスラムに偏見を持たなかった日本が、明らかに変わり、「米国と一緒に戦争をするんだ」というイメージを彼は強く持ったらしい。2月11日の安倍首相の施政方針演説にも、近代化が進んだ欧米列強の姿を目の当たりにした岩倉具視の言葉を引き合いに出し、「明治の日本人にできて、今の日本人にできぬはずはない。前に向かって力強く踏み出そう」と檄を飛ばしている・・・

 その古賀さんが3月末をもって「報道ステーション」のコメンテーターを下ろされるという。安倍首相の気に染まぬことを言いすぎたかららしい。籾井NHKならいら知らず、テレビ朝日がなぜ? メールマガジンによれば、こうだ。「テレビ朝日の報道局長、篠塚さんっていうんですけれど、この人がもう絶対古賀は出すなという厳命を下したみたいなので4月以降は出られない。実はこの篠塚局長っていうのはずっと早河会長の懐刀というか、茶坊主でみたいな人手で・・・」。安倍官邸から睨まれていた古賀さんが遂に引導を下されたというわけだ。それにしても、妙な雰囲気になってきたと思わざるを得ない・・・「こうなってくれば、むしろモノが言いやすくなってきた」という古賀さんの意気込みに敬意を表するほかない・・・

 今日の一句は、「美しき 春日こぼるる 手をかざし」中村汀女。 

2014年12月16日 (火)

映画゛紙の月」を観る

  映画「紙の月」を観る。直木賞作家・角田 光代:原作、宮沢 りえ主演、吉田 八大監督作品という話題の映画である。第11回東京国際映画コンペテション部門で最優秀女優賞(宮沢りえ)と作品賞(紙の月)の2冠に輝いているだけあって、人間の心の奥底を見事に描いた作品で、実に見応えがあった。主人公の梅澤梨花は銀行の営業担当契約社員。何不自由のない生活のなかで、ちょっと生じた心の隙間がどんどん広がって、「億」という大金を横領するに至るというストーリーだ。元銀行員として、現役時代に身近な体験はなかったものの、おカネを扱う商売だけに、営業マン、管理者時代を通じて、そんなリスクとは常に隣り合わせだったことを思い出し、ぞっとする・・・

  この映画の冒頭と最後に出てくる梨花の中学時代、その聖歌合唱シーンに面食らう。彼女はカトリック系の女学校に通っていたのだ。親の財布から盗んでユニセフに不相応な寄付をした梨花に修道女は叱る「あなたは施しをする時、偽善者たちが人から褒められようと会堂や街角でするようにラッパを吹きならしてはいけない」と。梨花は愛した若き大学生「光太」を助けるために「施し」をするわけだが、しかし、それは横領したカネだ。贈った人(横領された預金者)が、誰かに(光太に)カネを贈っているという「自覚なき贈与」と言えなくもない。大澤真幸・社会学博士は言う「法的には犯罪だが、哲学的には、真実の贈与を媒介したと見なすこともできるのではないか。この映画は横領を肯定はしていないが、贈与に伴うとてつもない深い逆説を提示している」と・・・宮沢りえの「濡れ場」など、どこかへ吹っ飛んでしまう・・・

  今日の一句は、「こんな日は 甘くなるまで 人参かむ」石田杜人。

2014年10月24日 (金)

映画「ふしぎな岬の物語」

 吉永小百合・主演、プロデュースで話題の映画「ふしぎな岬の物語」を観る。原作は森沢 明夫の小説「虹の岬の喫茶店」。オムニバス形式の物語なので脚本がたいへん。成島 出監督と親交の深い加藤 正人と安倍 照雄が担当し、味わい深いドラマに仕上げている。ストーリーは極めて淡白だ。「ふしぎな岬」というだけで、映画では場所を特定していない。小舟の文字「千葉」から推定すると房総半島なのだろう。360度の眺望が効く、実に美しい海景色だ。夫を亡くし1人でカフェを切り盛りしている吉永演じる柏木悦子、悲喜こもごもの人生体験をしながら、いろいろな人に想いをかけ、また周りの人たちからも温かく受け止められ、力強く未来に向かって歩いていく、そんなラストシーンがとても印象的だった・・・

  今回で3度目の共演となる笑福亭鶴瓶、その演技が光る。30年、岬に住み、悦子の淹れるコーヒーを飲みに通うタニさん、淡い恋心を抱きながらも遂に口に出せないでいる。見かねた悦子の甥・浩司(阿部 寛)が二人を合わせる場をつくる・・・が、帰ろうとするタニさんの姿がどうも元気がない。浩司の「どうだった?」に、振りむきざま大きく「×」を描き、あの独特の笑顔を返す。そして最後、リストラされて大阪へ帰る船上のタニさんに、悦子は大声で別れを告げる。何度も何度も手を振って・・・成島監督は言う「亡きご主人の絵と別れる場面に泣かなかったのに、タニさんと別れるシーンには吉永さん、ぽろぽろ泣いたよ」と。悦子もタニさんの「男の純情」に本当は惚れていたのかもしれない・・・モントリオール映画祭で受賞した価値は十分ある・・・

  今日の誕生日の花は、ベニシタン。花言葉は、統一、安定。 今日の一句は、「さむざむと 影なき秋の 遍路かな」佐々木 有風。

 

2014年10月 5日 (日)

映画「柘榴坂の仇打ち」を観る

  中井 貴一主演、若松 節郎監督の映画、「柘榴坂の仇打ち」を観る。浅田次郎の短編集「五郎治殿始末記」の中の一編(文庫本でわずか38ページ)というから驚く。シナリオ作りは、さぞたいへんだったろう。「高松宏伸」「飯田健三郎」「長谷川康夫」の3人がタッグを組んだことも頷けるし、練りに練って力作として仕上げていることにも感銘を受ける。音楽を担当した久石 譲氏いわく「脚本を読んで最も心に残ったのは”武士としての矜持”、即ち、何があっても揺らぐことのない武士の魂だった」。作家で昭和史研究家・半藤一利も言う「主君の井伊直弼への義の堅固さと、13年間も夫を支えた妻「セツ」の情のやわらかさに、私はボロボロ涙を流すばかりだった」と。「芝居はホン(脚本)から」と言われるが、まず脚本を褒めたい・・・

  ところで、映画だが、主演、中井貴一の名演技の一言に尽きる。井伊直弼の金習役に抜擢されながら櫻田門外の変では、主君を守りきれなかった志村金吾。彼の犯した罪は重く、切腹さえも許されない。ひと月後、藩は金吾に命令を下す。「逃亡した水戸浪士どもの首の1つも挙げて、直弼さまの御墓前にお供えせよ。しかし、激しく自分を責める金吾は自ら命を断とうとする。その金吾を支え、励まし続けたのは妻のセツ(広末涼子)。「御下命を果たし、本懐を遂げてこそ武士ではありませぬか」。13年の月日が流れる。浪士の一人、佐橋十兵衛は俥夫(阿部寛)となっていた。雪の降りしきる柘榴坂で両者は剣を交える・・・が、何とその日、政府から「仇撃ち禁止令」が出ていたのだ。その剣に追い詰められて「成敗してくれ」と頼む十兵衛に、金吾は静かに言う「お互い生き抜こう」・・・実に静かな、落ち着いた名作だった・・・

  今日の誕生日の花は、クコ。花言葉は、お互いにわすれましょう。 今日の一句は、「枸杞垣の 赤き実に住む 小家かな」村上鬼城。

2014年9月12日 (金)

作家・佐藤愛子さんの「相棒ファン」に共鳴

  文藝春秋10月号の総力特集「新聞、テレビの断末魔」のひとこま、「新聞、テレビ『それでも私のお気に入り』」の中で作家・佐藤 愛子さんが「相棒」を上げておられることに思わず膝を打つ。実は私も大好きだからである。彼女は言う「耳が遠いためか出演者の言葉が聞き取りにくい。特に若い人たちの台詞がさっぱり分からない。と言っているうちに、自分の耳の遠さに気付く。そんな私がテレビ朝日の『相棒』だけは欠かさずみています。どの俳優さんの台詞も実によく聞こえるからです」と。まさに同感。主演の「水谷 豊」の声と語りが実にいい・・・

 「練達の俳優が揃っているからか、台本がいいからか、どの俳優さんもそれぞれの個性に情熱が籠っているのがとても気持ちいい」と。とにかく佐藤さんはべた褒め。毎日、3時56分から老眼鏡を外してテレビをつけ、サンドイッチを食べながら「相棒」を視る。それが自分の至福の時間なのだとのこと。大作家に、「至福」とまで言わせる水谷 豊氏は俳優冥利につきるのではないか。その点は全く同感なのだが、演出を担当している「和泉 聖治・監督グループ」の力量も見逃せないと私は思う。作品づくりの中にチーム全員が溶け込んで、俳優の個性をうまく引き出している。だから、再放送を何度みても飽きないのではないか。これは、山田洋次監督作品も一緒・・・老いた仕事人間の唯一の憩いの時間・・・

  今日の誕生日の花は、アイ。花言葉は、美しい装い。 今日の一句は、「いくつかの 藍の言葉を 女より」高野素十。

2014年9月 2日 (火)

「輸入食品に安全を期待するな!」

  会員制雑誌「選択(9月号)」の巻頭インタビュー「輸入食品に安全を期待するな」に注目する。語り手は高橋五郎・愛知大学国際中国学研究センター所長。いわく・・・安全性の問題は中国からの輸入食品だけとは限らない。極論すれば日本国内で生産、加工している場合でも同じことが起きるだろう。食品の正体が一般人には分からないものになっている。また、加工している人でさえ、材料になっている食材にどれだけの農薬や抗生物質が入っているか把握していないだろう。その上で分業化が進んでいるため、各過程でそれ以前にどのようなものが混ざっているかを知る術がない・・・

  日本の消費者が潔癖症になりすぎていやしないか。ある程度の農薬や薬品を摂取することは避けられないし、人間の体は想像よりも強いということを忘れてはならない。農薬などが体内に入った場合、対外に排泄する機能も備わっている。しかし、それには限度があり、現在の食品流通構造によって予想以上の薬品などが体内に入ってくる危険性が高くなっているのも事実。従って、できるだけ加工度の低い食品を使って、自ら調理することでリスクは格段に下げられる、その工夫が必要。現在の日本は安全な食品をあるべき姿で食べる権利、「食権」を奪われている状態と思う。これを取り戻さねばならない・・・輸入食料品に頼りすぎる日本!・・・

  今日の誕生日の花は、チューべローズ。花言葉は、危険な快楽。 今日の一句は、「初秋や 海ま青田の 一みどり」松尾芭蕉。

2014年7月 9日 (水)

NHKの「上層部による言葉刈り」

  会員制月刊情報誌「選択」巻末の「マスコミ業界ばなし」が興味深い。7月号は「NHKの上層部による言葉刈り」。ある記者は言う「以前であればデスクのチェックで通過していた原稿が、時に副部長クラスの目を通さなければならなくなっている」と。現場の記者からは「官邸による間接的な『検閲』のようなもの」との怒りの声が聞こえる。籾井会長は麻生蔵相のお友達で、かつ安倍首相の思想に共鳴しているご仁。従って、「NHKの報道が政府の意向に反するものであってはダメ」と言って物議を醸した経緯があり、強く否定はしたが、実体はどうもそのようになりつつあるようだ・・・

 「現在、籾井会長に擦り寄っているのは、板野専務理事・放送総局長と井上樹彦編成局長。この2人が実際に現場に介入しているが、さらなる体制強化のため『主要ポストの人間を恣意的に変えられるように制度変更することを検討している』」と同誌は書いている。これによって、いつでも不満分子の首を飛ばすことができるわけだ。私が重宝にしているNHKラジオ朝のビジネス展望、政府に批判的な辛口コメンテーターが多いだけに、担当ディレクターのクビと共に、先生方も次々にNHKラジオから消えていきやしないかと甚だ心配だ・・・これでは「公共放送」が泣く・・・

  今日の誕生日の花は、ツキヌキソウ。花言葉は、愛の絆。 今日の一句は、「恋さめて 金魚の色も うつろへり」高浜虚子。

今日の日は、ジェットコースターの日。

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